フリーランス新法が2024年11月1日に施行された。
私自身、23歳から東京でフリーランスとして働いて13年が経つ。人ごとではなくフリーランスを取り巻く環境について考えていきたい。
- フリーランス新法の重要ポイント
- 実務での具体的な対応方法
- 契約書作成時の注意点
- トラブルを未然に防ぐための知識
- 自身の権利を適切に守る方法
がざっと分かる内容になるよう執筆していく。
私は法律の専門家ではないし、この投稿のために調べた内容であることはあしからず。ただ13年のフリーランス経験を生かして重要ポイントを抜き出してまとめていく。
【フリーランス新法】中学生にも分かるように解説
フリーランス
みなさんは「フリーランス」って聞いたことがありますか?
会社に所属せずに、自分の技術や才能を活かして仕事をする人たちのことです。
なぜこの法律ができたの?
フリーランスの人たちが安心して働けるように、新しい法律(フリーランス新法)ができました。
これは、フリーランスの人たちを守るためのルールブックみたいなものです。
どんなことが変わるの?
✅ 仕事を頼む時は、必ず「契約書」を作らないといけなくなります(約束をちゃんと紙に書くということです)
✅ お金はきちんと決められた日に支払わなければいけません(部活のお金を集める時のように、期限を守る必要があります)
✅ 理由なく一方的に仕事を断ることはできません(野球の試合を直前でキャンセルするようなことはダメということです)
具体的な例で考えてみよう
例えば、イラストを描くお仕事をしているAさんの場合:
- ✅ 仕事の内容、締切日、報酬をはっきり決めます
- ✅ 約束した日にお金がもらえます
- ✅ 無理な要求をされても断ることができます
つまり、この法律は「フリーランスの人たちが、安心して、公平に、楽しく働ける環境」を作るためのものなんです。
【フリーランス新法制定】背景と目的
背景
フリーランスは労働者ではない。”雇われているか”が大きな違いとなる。
- 契約ごとに仕事を受ける
仕事ごとにクライアント(依頼主)と契約を結び、その都度報酬を受け取る - 独立して働く
会社の指示に従うのではなく自分で仕事の内容や進め方を決める。
フリーランスは労働基準法の適用外となり、権利が十分に保護されてこなかったことが問題視されている。
労働時間の規制がない、最低賃金の適用外、労働条件の明示義務がない、安全と健康の規定がないといった条件で働くことになる。
そのため、フリーランスが不当に不利益を被らないように、委託する側が環境を整える必要が求められている。
フリーランスの実態
2020年の国の調査、内閣官房「フリーランス実態調査結果」によると、日本のフリーランス人口は462万人(本業214万人・副業248万人)と示されている。
また、別の調査によるとフリーランス人口、経済規模ともの増加している。
その一方、3割程度のフリーランスが取引先とのトラブル経験をしている。
それ以上のトラブル、いわれのない悪評が立つのを防ぐため、泣き寝入りのような形で対処しているとの結果がある。
37%が取引先とのトラブル経験有り。
その内6割
→発注時に、報酬や業務内容などが十分に明示されなかった
21.3%
→交渉せず受け入れた(何もしなかった)
10%
→交渉せず自分から取引を中止した
新法制定のポイント
2023年4月28日に国会で成立、同年5月12日に交付、2024年11月1日より施行。
具体的には、
- 契約条件の書面による明示
- 60日以内の報酬の支払い
- 不特定多数に対する募集情報の正確性確保
- 違反があった場合の処罰規定
の内容を盛り込んだ新法が施行された。
【主な規定内容】
フリーランスに対して禁止される行為7つ
1️⃣ 受領拒否
フリーランス側の責めに帰すべき理由のない成果物の受領拒否
2️⃣ 報酬の減額
フリーランス側の責めに帰すべき理由のない報酬の減額
3️⃣ 返品
フリーランス側の責めに帰すべき理由のない成果物などの返品
4️⃣ 買いたたき
相場に比べて著しく低い報酬の不当な決定
5️⃣ 購入、利用強制
正当な理由のない発注事業者指定商品の購入または役務の利用の強制
6️⃣ 不当な経済上の利益の提供要請
発注事業者のために、金銭、役務そのほかの経済上の利益の提供を要請すること
7️⃣ 不当な給付内容の変更・やり直し
フリーランス側の責めに帰すべき理由のない給付内容の変更、またはやり直しの要請
書類での明文化
企業が発注する際に、取引内容を書面で明確にする必要がある。メールや電子契約書でよい。
消費者から頼まれる取引は対象外となる。
- 委託する業務内容
- 成果物の内容
- 報酬
- 支払い期日
発注事業者に違反があった場合
- 誰が処置をとる?
公正取引委員会、中小企業庁長官、厚生労働大臣
- どんな処置?
助言、指導、報告徴収、立入検査、勧告、公表、命令
- 50万円以下の罰金に処されるおそれ
発注事業者に、命令違反や検査拒否があった場合
企業の場合、行為者と法人の両方が処罰対象になる
適用対象者の範囲
フリーランス=特定受託事業者
業務委託を行う発注事業者=特定業務委託事業者
(個人か法人に関わらず)
保護対象になるのは、
- 一人で仕事をしている個人事業主
- 従業員を雇っていない法人のいわゆる一人社長
13年のフリーランス経験から見る
私の場合
各案件を引き受けるのに受注前に内容を明示されることは少ない。発注側にとって「わかっているでしょ」の姿勢で物事が進んでしまう。
こちらが業務を進めていくために支障が出ないようにもちろん確認はしていくけど、案件内容やギャラについてアレコレ聞きすぎるとめんどくさいヤツに思われそうという懸念がどうしてもある。
その点、「はいokです!」で仕事を受けていく人は有利なんだろうと思う。
ギャラについても事後交渉が多い業界だ。請求書を出すまでに1、2ヵ月かかることもザラだし、それから振り込まれるとなるとさらに数カ月後になる。
ギャラが振り込まれないことだってある。年3回くらいはある感じ。そのため請求書を管理して振込みチェックをすることは欠かせない。
フリーランス新法の評価できる点
全体的に見てフリーランスの状況を改善していこうという姿勢が感じられる。
- 委託する業務について事前に書面による明示を必要としたこと
- 支払い期日を60日と目安を出したこと
は評価したい。
これまで発注側の成り行きに任せる部分だったものが、受注するこちら側の正当な権利として求めることが出来ることは大きい。
この2点が当たり前になってくると、明示してこない発注側に対して「アレ?あやしいぞ?」と思えるようになる。受注する側の認識として浸透していくことでフリーランスを取り巻く環境が変化していくはず。
ただ、発注側へのペナルティーについて実効性がないと言わざるを得ない。
改善を求む
違反があった場合の、「50万円以下の罰金に処されるおそれ」は弱すぎ。50万円って金額が安すぎる。ていうか発注側にとってノーダメージ。
社名の公表が影響する会社は1%もいない。メディアに取り上げられないと意味がないと言える。
フリーランス新法に反する行為を受けたフリーランスは、公正取引委員会や中小企業庁、厚生労働省に申出の手続を行うことができる、とあるが、実際に手続きする人いてる?って思う。
例えばだけど、違反した発注側は、事前に決まっていたギャラの2倍を受注者に支払う、としてしまったらいい。
フリーランス新法に違反するデメリットが分かりやすいし発注側に直のダメージがある。不当な取引となった受注側は被害を受けているわけだから、受注側に金銭メリットがあって然るべき。
ただこうなると、取引先との関係が終わることを覚悟しなければならないけど。
両者の意識の変革が必須
フリーランスの働き手も、発注する側にとっても関係してくる問題。フリーランス新法の認知度がさらに高まることを願う。
案件の規模の大小に関わらず契約をしっかり交わす、という流れにしていかないといけない。業界全体の意識が変わるには時間がかかる。
ただ、受注に関する適切な案件事例が仲間内に広がっていくだけでも、フリーランスの待遇に変化は出てくるはず。良い事例が増えることで、フリーランス自身が自信を持って交渉できるようになり、発注者側も適切な契約を行う意識が高まってくる。